ハノンへの信頼はもはや信仰と呼べる域にまで達しています。ハノンに準ずる教本も同様です。音階の反進行があるとか無いとかの議論でしかありません。

 

役に立つのか?私は、こういうのは劇薬だ、と答える。使い方次第でしょう。ただし、間違った使い方(弾き方ですね)をするととんでもなく技術を損ねます。だから劇薬。因みに私自身は使ったことがありません。生徒に対しては数人に使いました。ある種の人には効率的に教えることができると思います。

 

とかく器械的に弾く傾向になりがちですし、練習する方も(現実は)集中して弾かない。また、ハノンを使わなければ上手にならないわけではないので、動きを単純化して説明した方が理解が進むと判断した場合のみ使うわけです。

 

ハノンをやったから上手になる、という魔法の曲集ではないのです。 

 

正しい?使い方は、テクニックのカテゴリーに属しますから、そちらを参照してください。全体を書き上げるのはまだ先になりますが。

 

ハノンなどを否定する人もいます。でも否定する理由は、時代遅れとかそんなものです。時代の最先端をいく教本があったとしても、使い方、弾き方次第だということだけは変わりません。そんな否定の仕方では説得力はないでしょう。

 

チェルニーなどの練習曲にしても同じことが言えます。簡単に純然たる指の練習、などと言って賛成も反対もありません。

 

曲の中で同じ課題を練習できるといった不要論には、その通りだ、しかし立派な曲を単調な練習課題にするのは気が利かないだろうと答えたい。

 

曲の好き嫌いは別にして、30番、40番はじつに優れた曲集です。後者など、予習復習を繰り返しながら難度を上げ、40番を終えるころには非常な力を備えていられる。どうやって難しさに段階をつけられるのか、いざ自分で作曲してみようと空想してもできません。

 

50番はランダムに抜き出してするだけで済みます。基本的に40番の20番以降の曲をタフにしただけです。その時々の課題に応じて取り上げるくらいで構わないと思います。1番より50番が難しいというわけではないですから、順を追って練習するのは意味をなしません。

 

クラマーについては、曲集の特徴を捉えきれていないのではないでしょうか。たいへん美しい曲が多く、すでに動かすことにそれほど困難を感じなくなった指を制御するのに作曲者の意図は向けられています。小学生のコンクールなどで課題に出す性質ではないでしょう。

 

いずれの曲集にせよ、やれば上手になるのではない、いかにするか、これだけが大切なのですが、純然たる指の練習などの表現がある限り、練習の質に危惧の念を持たずにはいられません。