5本の指はそれぞれ特徴を持っています。それだけに、そこを誤解したばかりに無理な練習を重ねる結果にもつながります。

 

ショパンは最も弱い指は3だと言ったそうです。これは正しい。でもふつうピアノをある程度以上弾く人は4が一番弱いと言います。

 

私はショパンの言葉を全面的に肯定した上で、一番弱いのは(大抵の場合)1であると言っておきます。これも、1は強いと思っている人が多いと思われます。

 

人間の親指は言うまでもなく物をつかむためにあります。宙で手をゆっくり握ってみて下さい。他の4本は、ピアノを弾く時と動き方は違いますが、動く方向は同じです。

 

でも親指は上方に向かって動きます。ピアノを弾く時とはまったく違った方向ですね。ピアノを弾く時は親指は下に向かって動きます。

 

親指は一応この方向にも動くようにできていますが、この動きは意識的にするのは結構難しい。というかぎこちない感じですね。それを弱いと表現しても良いでしょう。

 

子供や初心者は弱い親指を正しく動かす代わりに手首をストンと落として弾く。音は大きくなります。そこで1は強い指だから気をつけましょう、という頭が出来上がる。1を使う箇所が強くなり易い原因は上記のとおり、弱さにあるにも拘らず、です。

 

非常にしばしば見られる欠点は、親指が硬く、自由に使えないことです。これなどは観察力の不足に由来する誤解から来た欠点だと言えましょう。親指に関しては次項でもう少し書きます。

 

2指に関しては取り立てて書く必要はありません。

 

3指は既に書いたように、1指を自由に使えるようになった人にとっては最も弱い指だと言えましょう。最も鈍いと言っても良いです。

 

4指は、ピアノを弾くことが指を他の指より上に上げて打ち下ろすのだったら一番弱い指だということになります。しかし、そのような弾き方は全く意味がありません。4指は特別強いということは無いですが、大変素直な指だと言えます。

 

5指は肩、背中との連動が無いと弱いですが、この指に関しては誰でもある程度まともに扱っていますから、細述は後回しにします。