手首の重要性は誰もが説いています。これはさすがに誤解のしようがないとも言えます。

 

ただし柔らかいという言葉はひとつですけれど、その柔らかい状態は大変多彩なあり方だということを忘れないように。

 

例えば大きなリンゴでも持ってゆっくり波のように動かしてみてください。だらりと垂れずに保っている時、手首の柔らかさを感じようとします。ピアノの演奏にあたっては、その時の感じに近いことが多いのです。

 

ピアノの弾き方といえばお題目のように唱えられる「脱力」も、少し注意してみれば手首と肩に関することだと気がつきます。

 

肩に関しては大いに疑問があることは書きました。手首についてはどの記述をみてもほぼ適切なアドヴァイスがなされていると思います。

 

ひとつ注意したいのは、手首から先をダランとした状態を「脱力」と思い込むことは良くないということです。

 

そのような感触で弾くのが間違いなのではありません。非常に軽やかな動きなどに対しては手のそうした使い方が不可欠です。

 

しかしこの弾き方だけに頼ると、弾きやすさはあるでしょうが、何とも上ッ調子で真実味に欠けた音になります。

 

 

一番使うのが難しいのは手首の横方向へ自由さです。こちらの方向は可動域が狭いのですが、ピアノ演奏に当たっては非常に重要な役割を果たします。

 

この動きは腱鞘炎の原因になるから絶対にしてはならない、というサイトがありました。それには大いに疑問を持ちます。横方向の動きだけを使うと傷めるかもしれませんが、そもそもそんな不自然な使い方をするでしょうか?

 

例えばCEGCというアルペッジォを連続して弾きます。その時には1指から掬うような動作が連続します。その時、下膊を回転させるだけだったらどれほど弾きづらいか。多かれ少なかれ手首は横方向へも使われています。それを意識的に訓練しないとむしろ手を傷めるのです。言葉で分かりにくいのでこれも動画を貼っておきましょう。