支え

この言葉もピアノの奏法について語る際に(そして恐らくはレッスンにおいても)しばしば使われています。

 

でもいくつかの文章に目を通しただけでも、かなりアバウトだと言わざるを得ない。書く方も読む方も、疑問を持たずに説明が推移している様子は、何か異様ですらあります。

 

漠然と理解できる範囲で、これがどのように使われているかを見てみます。定義したいのではありません。ただ、支えるということは、演奏上きわめて大切なので、触れないわけにはいかないのです。

 

「支え」で検索上位に出たものを紹介します。もう一例、これも基本的に同じですが、より一般的な理解でしょうか。

 

指立てふせのイメージでしょうね。ほとんどの人がこうした認識で支えという言葉を使います。

 

では、実際にはどのように弾くかといえば、当然ながら指立てふせのまま弾けるはずがありませんから、どこか別の部位で何らかの操作をしているわけです。

 

単音だけを取り出してみた場合、第三関節(指の付け根です。これは本来正式な医学用語ではないのですが、そういった議論は不毛です)が固定されていて、音が固くなります。速い動きにも対応できるとは到底思われません。

 

しかも肩の力は完全に抜く。どうやってアフタータッチの地点を探るというのでしょうか?この辺りはたいへん重要なので「強さとは何か」という項目でもう一度詳しく取り上げます。 

 

支えるというのは「肩で腕の高さを保つ」というのが大きな意味です。指先に関しては、左足に体重を乗せて優雅に右のつま先を着けたバレリーナのような状態だと思ってください。つま先の「力」ではない。

 

もう一例出しておけば、レコードの針のような感じと言えばよいでしょうか。針圧は重すぎても軽すぎても駄目です。針を支えるアームと、そっと、でも確実に盤面に「吸い付く」針先、これはそのままピアノのテクニックの最重要な部分のイメージと重なります。 

 

さて、指立てふせのような状態を「支える」と称する人があまりに多いので、支えとは肩で高さを保つことだと言いました。

 

実際は、アフタータッチから沈み込まないように(つまり肩で保たれて)それでいてしっかりとフォームを保った指先(フォームとは丸くとか伸ばしてのような形のことではありません)も支えと言うべきです。先ほど例に出したバレリーナの右足ですね。 

 

なお、高さを保つ、というのはヴァイオリニストの右腕のような感じだと理解します。彼らは4本の弦を、右腕の高さを変化させることで、間違えずに選んで弾いているのです。これは誰でもお分かりでしょう。

 

このような腕の働きは、当然肩が担っています。支えというのは肩と指先の両方を含んだ感覚のことだと言いなおしても良い。手作業のほとんどすべてがこの「支え」無しには不可能であることは、日常の動作を思い出してみたら納得いくでしょう。

 

肩から先を完全に脱力して、という教えからはどんな運動も、表情も生まれえない。それは強調しておかねばならないと思います。